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ソニー二審で敗訴、西電捷通の特許権侵害を認定【中国訴訟情報】

近日、西安西電捷通無線ネットワーク通信株式会社(以下、「IWNCOMM」と略称)が、WAPI(Wireless LAN Authentication and Privacy Infrastructure)発明に関する特許権侵害を理由に、ソニーモバイルコミュニケーションズ(中国)有限会社(以下、「ソニー中国」と略称)を提訴した案件の二審判決が下された。

※WAPI:中国独自の無線LAN暗号化規格

北京市高級人民法院は北京知的財産法院の一審判決を維持し、上訴を棄却した。

一審案件番号
(2015)京知民初字第1194号
二審案件番号
(2017)京民終454号
事件概要
発明特許権侵害紛争
侵害特許番号
ZL02139508.X
合議廷
焦彦、劉慶輝、毛天鵬
書記員
張倪
当事者
上訴人(一審被告):ソニーモバイルコミュニケーションズ(中国)有限会社
非上訴人(一審原告):西安西電捷通無線ネットワーク通信株式会社
判決日
2018年3月28日

一審判決

1、ソニー中国会社は、直ちに西電捷通会社の第ZL02139508.X号「無線LAN移動装置の安全アクセス及びデータ秘密通信の方法」発明の特許権に対する侵害行為を停止する。
2、ソニー中国会社は、西電捷通会社の経済損失862万9173元を賠償する。
3、ソニー中国会社は、西電捷通会社の合理的な支出47万4194元を賠償する。
4、西安西電捷通会社の他の訴訟請求を棄却する。
二審判決
上訴を棄却し、一審判決を維持する。
適用法令
専利法11条、65条、69条、侵権責任法9条1項、中華人民共和国民事訴訟法170条

事件の背景

中華人民共和国工業情報部(工业和信息化部、MIIT)の規則では、ネットワーク・アクセスのライセンスを取得するためには、WAPIテストが必須とされている。

即ち、中国で携帯電話を販売したければ、その製品は係争中の特許の使用が必然的に含まれる WAPI テストに合格しなければならない。

IWNCOMMは、WAPI のコア技術の特許保持者である。

概要

通信技術分野においては通信方法特許が国家標準特許に組み入れられ、また特許権者によりFRAND (Fair, Reasonable And Non-Discriminatory) 声明が発表されることが多い。

本事件では方法特許について権利が消尽するか、また標準特許に基づくFRAND声明が権利行使に影響を与えるか否か、損害賠償額をどのように決定するかが争点となった。

北京知識産権法院は、方法特許は消尽することなく、またFRAND声明により権利行使に影響を与えることはないとして特許権侵害を認め、また損害賠償額として実施料相当額の3倍である910万元(約1.5億円)を認める判決を下した。

訴訟の経緯

2015年8月、IWNCOMMは、ソニー中国によって生産・販売される35機種の携帯電話製品が自分の第ZL02139508.X号特許(以下、関連特許と称する)を侵害するとの訴えで、北京知財裁判所に提訴した。
侵害行為の差止めを求めると共に、経済損失及び合理的な費用、総計3336万元あまりの賠償金を請求した。

2015年7月23日にソニー中国は、関連特許について、特許復審委員会に無効宣告請求を提出し、関連特許すべてのクレームが無効であると主張した。

復審委員会は2015年11月16日に口頭審理を行い、2016年2月17日に、関連特許が有効であるとの第28356号特許無効宣告審査決定を下した。

2016年2月25日に、北京知財裁判所が特許権侵害案件を公開審理した。

IWNCOMMは、ソニー中国によって生産・販売されたL39h(XperiaZ1)、L50T(XperiaZ2)、XM50t(Xperia T2 Ultra)、S39h(Xperia C)などの35機種の携帯電話製品が関連特許のクレーム1、2、5、6の技術案を使用したと主張した。

※画像はソニー「Xperia Z1」
引用元:
https://www.sonymobile.co.jp/xperia/docomo/so-01f/design/color.html

北京知財裁判所は、審理を経て、次のように認定した。

1. 被告の直接侵害行為が成立する。

2. 被告の共同侵害行為は成立しないが、幇助侵害行為が成立する。

3. 「ライセンス費用の3倍で賠償金額を確定する」との原告の主張を支持する。

2017年3月22日、北京知識産権法院(「裁判所」)は、IWNCOMM対ソニー中国の一審判決を下した。

裁判所は、ソニー中国が無線 LAN 認証及びWAPIに関連する標準必須特許(Standard Essential Patent、SEP)を伴う、IWNCOMMの一般特許 No. ZL02139508.Xを侵害した、と判示した。

裁判所はソニー中国に対して、携帯電話機器35機種の生産および販売を禁ずる永久的な差止命令を下した。
裁判所はさらに、提出されたロイヤルティ・レートの3倍をベースに算出された損害賠償、弁護士費用、その他の適正な費用を含む910万元の支払いを言い渡した。


記事執筆:北京商専永信特許事務所(INTELIGHT IP LAW FIRM)


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