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中国で商標を勝手に取られてるかも…!?冒認出願の実態とその対策

Photo by  Robert Anasch on Unsplash


自社の商品・サービスのブランドイメージを育て、悪質なパクリ製品からブランドを保護するためにも欠かせない商標。

しかし近年、中国において第三者が商標を無断で出願・登録する行為(以下、「冒認出願」と呼びます)が多発し、その被害が拡大していることはご存知でしょうか。

中国で勝手に取られた商標の存在を知らずに製品を販売していると、ある日突然商標侵害で訴えられて高額な損害賠償を請求される…といったことになりかねないのです。


目次[非表示]

  1. 1.中国EC市場でも日本製品の人気が高まっている
  2. 2.中国の冒認出願専門業者とは
    1. 2.1.冒認出願業者の狙い
    2. 2.2.冒認出願業者はダミー会社を利用する
  3. 3.放置することで起こりうる問題
    1. 3.1.自社ブランドなのに商標権侵害で訴えられてしまう
    2. 3.2.自社ブランドが勝手に使われてしまう
  4. 4.対策する
    1. 4.1.中国商標を調べる
    2. 4.2.すでに商標を取られてしまっていたら?
    3. 4.3.取られる前に、取る
  5. 5.ロジック・マイスターにおまかせください


中国EC市場でも日本製品の人気が高まっている

ここ数年、中国からの訪日観光客の増加と「爆買い」がたびたび話題になってきましたが、2020年はコロナウイルスの世界的流行によって来日がほぼ完全に途絶えてしまいました。

一方その中国では「淘宝网(Taobao)」や「天猫(Tmall)」といったECモールが広く利用されています。そのなかでも越境EC市場が年々拡大を遂げてきました。

中国商務省「2019年EC業界報告」によれば、越境ECの輸入額は918.1億元と前年比16.8%増加しています。そのうち、日本からの輸入が占める割合は全体の20.8%でトップとなっています。

さらに2020年に入って、Tmallの越境EC部門は4月-6月期で前年比40%以上も売上が伸びたとの情報もあります。

コロナ禍に見舞われた2020年でしたが、これまで日本に来て買い物をしていた人々は代わりにオンラインで日本製品を手に入れるようになってきたようです。

むしろ、別に日本にわざわざ行かなくても日本製品をECで買うのが当たり前になりつつあるとすれば、購入のハードルが下がり、より幅広い層の中国人が日本製品にアクセスできるようになったといえるかもしれません。

この流れは、中国市場で売上拡大を狙っている日本企業にとっては大きなチャンスとなるでしょう。しかし、同時に知的財産リスクへの対策の必要性も高まっているといえます。

それでは、知財の中でも特に商標権にスポットを当て、中国で気をつけなければならない問題をご紹介します。


中国の冒認出願専門業者とは

中国には、商標の冒認出願行為を専門に行う業者というものが複数存在していることがわかっています。

彼らの手口はこうです。

まず外国企業(もちろん日本企業も含まれます)の商標を中国で大量に冒認出願します。特に、日本では人気が高まっているが中国ではまだそれほど知られておらず、これから中国でも人気が出そうだと思われるようなブランド名が対象になります。

そしてブランドを所有している当の外国企業がいざ中国で製品を販売しようとすると、高額なライセンス料の支払いや商標の買取を強要してきます。

さらには勝手に登録した商標を使って、みずから商品を販売する会社もあります。もちろん品質の保証もなければ、本社へのロイヤリティの支払いなどあるはずもなく、ブランドの知名度を利用した業者の丸儲けとなっています。

こういった悪質なビジネスを手掛ける冒認出願業者が増加しているのが、中国の実態のようです。


冒認出願業者の狙い

冒認出願業者は、特に中国で人気の高い日本製品やブランドを狙い撃ちにする傾向があると見られます。

例えば中国で高値で取引されるようになっている日本酒。中国ネットショップ各所では高値で取引されており、人気の銘柄は日本でも入手が難しくなっています。

ロジック・マイスターが協力関係にある中国弁理士と共同で独自に調べてみたところ、少なくとも240件を超える日本酒銘柄について、冒認出願業者と思われる企業によって勝手に中国商標が出願されていることが判明しています。

日本酒だけでもこれだけありますが、化粧品をはじめ中国で人気のある日本製品についても同様に、すでに多数の冒認出願がされてしまっている可能性も十分にありそうです。


冒認出願業者はダミー会社を利用する

以下に紹介する記事によれば、典型的な冒認出願業者として3つのパターンがあるといいます。


① 商標代理機関(弁理士事務所など)が「コンサルティング会社」を作り、その名義で大量に商標を出願する

② 商標代理機関の代表者や出資者が、個人の名義で大量に商標を出願する

③ 商標代理機関の代表者や出資者の家族が、個人でまたは関連会社を作って大量に商標を出願する

※参照:「パテント」2017「中国における商標冒認登録の概況及び対応戦略について」

https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/2921


冒認出願業者がこうしたダミー会社のようなものを作って、巧妙に正体を隠しながら冒認出願を行っている、ということも知っておきたいところです。


放置することで起こりうる問題

冒認出願を放置していれば、いざ中国現地でビジネスを展開しようとなった場合に大きなリスクとなる可能性があります。

では、具体的にはどのような問題が起こるのでしょうか?

起こりうる問題は2つあります。


自社ブランドなのに商標権侵害で訴えられてしまう

たとえ昔から自社が日本で使用してきた商標であったとしても、同じ商標を別人が中国で出願・登録していたならば、中国で該当する商標権を持っているのはその人(会社)ということになります。

この「他人が商標権を持っている」状態が続く限り、もしその商標を使用した製品を中国で販売したりすると、商標権を侵害することとなってしまいます。

そして中国でのビジネスが軌道に乗り、売上額が上がれば上がるほど、要求される賠償額も上がっていくでしょう。損害賠償の金額算定には、侵害者のビジネス規模の大きさも関わってくることがあるからです。

中国商標法第63条によれば、損害賠償額は以下のルールで算出されます。


① 商標専用権侵害の損害賠償額は、権利者が侵害により受けた実際の損失により確定する

② ①を確定することが困難な場合には、侵害者が侵害により得た利益により確定することができる

③ ②を確定することが困難な場合には、その商標の使用許諾料の倍数を参照して合理的に確定する

④ ③を確定することが困難な場合には、人民法院は侵害行為の情状に応じて 500 万元以下の賠償金の支払いを判決する


このように、もし商標権者が受けた「実際の損失」が確定できないときには、②「侵害者が侵害により得た利益」の額や、③商標の使用許諾料×商標の使用点数が考慮されることがわかります。

これまでに世界的に有名なブランドも冒認出願業者の標的にされ、損害賠償を払わざるを得なくなったケースが複数存在します。

よく知られている近年の事例では、「無印良品」を運営し中国でも店舗を展開している株式会社良品計画が、2019年に中国で「無印良品」の商標権を保有する企業に敗訴し、62.6万元(約1000万円)の支払いを命じられたほか、ブランド自体も「無印良品MUJI」から「MUJI」へと名称変更を余儀なくされる事件がありました。

※ (2018)京民終171号、(2018)京民終172号

他にも2016年には米国スポーツシューズメーカーの「New Balance」社が、New Balanceの中国語表記の商標(「新百伦」)を登録した別の権利者に訴えられ、500万元(およそ8000万円)の賠償を命じられています。ちなみに1審判決では賠償額は9,800万元(約15億6800万円)となっていました。

※ (2015)粤高法民三终字第444号


自社ブランドが勝手に使われてしまう

もう1つの問題は、たとえそれが冒認出願であっても中国商標が有効である限り、その権利者は(実際には日本メーカーと一切関係を持たない場合であっても)商標を使って堂々と製品展開することが可能だということです。

先ほども登場した「無印良品」のケースでは、日本の良品計画社とは無関係の企業が無印良品のブランド名をつけたタオルなどを製造販売しているだけでなく、「無印良品Natural Mill」という店舗をも展開し、日本の無印良品のショップに似せたスタイルで営業しているようです。

※ 参照:中国のパクリ無印良品で売られている残念な商品たち

https://www.businessinsider.jp/post-178952

商標を勝手に取られて使用されることで受ける被害は、本来中国市場で自分たちが得られたはずの利益をまるごと持っていかれる、ということだけに留まりません。

日本酒の例で考えてみましょう。例えば、

日本で人気があるらしい銘柄のラベルが貼ってある日本酒(しかし、実際には本家ではなく中国業者が作ったもの)が中国でも買えることがわかったので、ECサイトで買ってみた。「登録商標」と書いてあるからきっと本物の日本製に違いない。ところがひどい味でがっかりした。納得いかないのでサイトの口コミは最低評価にしよう、知り合いにもプレゼントしようと思っていたけどやめておくか…。

結構ありそうな話じゃないでしょうか?こうして自分たちの預かり知らないところでブランドの評判が傷つき、将来のお客様になったかもしれない人たちに製品を届けるチャンスを逃すことにもつながり、日本のメーカーにとって脅威となり得るのです。


対策する

それでは、冒認出願による被害からブランドを守るためにはどうすればよいのでしょうか?


中国商標を調べる

まずはじめに行っていただきたいのが、中国で商標を取られていないかどうか調べることです。

中国での商標調査はご自身でも無料ですることができます。方法は以下の記事で解説していますので、ぜひご参考にご一読ください。

  簡単にできる!中国で商標検索してみた結果 | 株式会社ロジック・マイスター 今回は、弊社の商標である「ロジック・マイスター」に類似する商標を検索することを通して、中国商標の検索方法をご紹介したいと思います。 株式会社ロジック・マイスター

調べる際に気をつけたいのは、もともと漢字ではない名称の場合、中国語に意訳・音訳で変換したものが商標として登録されるケースが多い点です。

例えば先述のNew Balanceは、中国語で「新百伦」として登録された商標が問題となりましたが、Newは「新」という意味で、Balanceは「百伦=bailun」という近い音の当て字、というふうに中国語訳されています。

日本語でもひらがな・カタカナの商標の場合、中国語への翻訳のパターンは1つではないので、取られてしまっていても発見が難しい可能性もあります。


すでに商標を取られてしまっていたら?

自社ブランドと全く同じ、あるいは非常によく似た中国商標がすでに他人に取られてしまっていることが判明した場合、取ることのできる法的手段は3つあります。

① 異議申立 (初步审定から3ヶ月以内の場合)

まず、「初步审定」(登録査定)があった公告の出された日から3ヶ月以内であれば、商標登録に対して異議申立をすることができます。(中国商標法第33条)

② 無効宣告の請求

商標登録が許可されてから5年以内であれば、無効宣告を請求することができます。

また「驰名商标」(日本でいう著名商標に近い)についての悪意による冒認登録に該当する場合には、5年を経過した場合であっても請求できます。(第45条)

③ 不使用による取消審判の請求

継続して3年間不使用である商標については、取消審判を請求することができます。

商標権者が商標の使用証拠を提出できない場合、または提出した証拠が無効と認定され、かつ不使用についての正当な理由がない場合、当該商標の登録が取り消されます。(第49条)

※特許庁「冒認出願対策リーフレット」2018年

https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/bonin/document/shohyo_syutugantaisaku/02measure-leaflet.pdf

冒認出願に対して異議申立や無効宣告請求を行う場合の主な理由については、特許庁の「リーフレット」に簡潔にまとめられているので、一部修正のうえ引用します。


(1)公知な外国の地名であること(第10条第2款)

(2)地理的標識であること(第16条)

(3)他人によって先に使用された一定の影響力を有する商標を、不正な手段により先行登録したこと(第32条後半)

(4)その他の先行権利を侵害したこと(第32条前半)

(5)法的代表者/代理人の関係又はその他の業務往来関係(第15条)

(6)欺瞞的な手段またはその他の不正な手段により登録された商標(第44条第1款:当該条項は無効宣告請求の条項です)


さらに中国では2019年の商標法改正で、冒認出願をはじめとする悪質な行為に対してより厳しい姿勢で臨むことを明確にしました。

具体的には、第4条に「使用を目的としない悪意のある商標登録出願は拒絶しなければならない」との文言が追加されています。また、この条文違反を異議申立て理由や無効理由とすることができるようになったことで、冒認出願を無効にできる可能性が以前よりも高まったといえます。

※ 中国商標法 (2019年改正のポイント)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2020/02/0e73bf51503978a39c0d7ac2024fd29b.pdf


取られる前に、取る

冒認出願に対して取りうる法的手段をご紹介しましたが、一度登録されてしまった冒認出願については、無効にするまでにはいくつものハードルを超えなければなりません。

いち早く冒認出願を発見して期限内に申立できるかどうかや、「驰名商标」と認められるかどうか、「不正な手段」により登録された商標かどうか…など、場合によっては証明が難しくクリアするのが困難な条件もあるのが実情です。

結局のところ、冒認出願の被害を未然に防ぐためには、中国でも自社商品やサービスに関する商標をしっかり取っておくのが一番の対策ということになります。

中国でのビジネスは日本以上に大きく成長する可能性がある分、冒認出願をやられてしまった場合の被害の大きさも桁違いになりかねないため、なるべく早期に商標を取っておくことをおすすめします。


ロジック・マイスターにおまかせください

ロジック・マイスターでは中国商標の調査だけでなく、協力する中国知財事務所を通じて中国商標出願のサポートから冒認出願の無効化等の手続き、また冒認出願業者の企業情報調査まで、様々なサービスをご提供しています。

多数の日本企業をクライアントに持ち、日本語対応も可能な弁理士が、豊富な経験を活かして全面的にバックアップします。

中国商標に関してお困りのことやご質問がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください!



協力:北京商专永信知识产权代理事务所 (INTELIGHT IP LAW FIRM)

副所長・弁理士 靳満堂 氏




参考文献

「商务部:2019电子商务报告」p.6以降

http://images.mofcom.gov.cn/wzs2/202007/20200703162035768.pdf

【最新データ】中国EC市場の現状(B2B、B2C、越境EC含)

https://www.chaitopi.com/2020/07/06/china-ec/

中国市場に今求められる日本製品 [Tmall国際の2020年以降の伸び]

https://www.polystar.yokohama/media/20200821/

中華人民共和国商標法 2019年改正 新旧対照表

https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20191101_jp.pdf

中華人民共和国商標法 2013年改正 日本語訳

https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20140501_rev.pdf

ロジック・マイスター 編集部

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