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2020年、米国101条拒絶率は低下傾向に【ソフトウェア特許】

Photo by Alexey Topolyanskiy on Unsplash


2014年のAlice判決以後、USPTO(米国特許商標庁)が審査で101条に基づく拒絶を出すケースが大幅に増加しました。

その影響は特にソフトウェア関連特許に対して顕著で、米国でソフトウェア特許を取るのは難しいと言われる原因ともなってきました。


ところが2018年Berkheimer判決と、それに続いてUSPTOが2019年に公表した審査ガイダンスである「2019PEG (January 2019 Revised Patent Subject Matter Eligibility Guidance, 2019年改訂特許適格性ガイダンス)」を転機として、状況は変わってきています。

USPTOが2020年4月に公表したレポートによれば、Alice判決の影響を受けている技術分野において、最初の拒絶理由通知(ファーストOA)で「101条拒絶」、つまり特許適格性のないことを理由とする拒絶を受ける割合が、近年は低下傾向にあることがわかりました。

また同時に審査官による判断のばらつきの程度を示す「不確実性」(uncertainty)のレートも下がっているとのことです。


以下では、そのUSPTO資料の内容をご紹介していきます。


グラフで見る101条拒絶率と「不確実性」


まずはグラフから、どのような変化が起きたのかを確認しましょう。

グラフ1ではAlice判決が出た前後の状況が表されています。


※グラフの出典はすべて「Adjusting to Alice: USPTO Patent Examination Outcomes after Alice Corp. v. CLS Bank International April 2020」より(下記リンク)

https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/OCE-DH_AdjustingtoAlice.pdf

https://www.uspto.gov/ip-policy/economic-research/publications/reports


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青の実線:Aliceの影響を受ける技術分野、破線:それ以外の技術分野、赤の縦線:Alice判決の時点


特にAlice判決の影響を受ける技術分野において、判決以前に比べてファーストOAで101条拒絶が出される割合が高まっていたことがわかります。


次にグラフ3によると、


縦線・実線:Berkheimerメモランダム公表、縦線・破線:2019PEG公表

※グラフ1との連続性はない点に注意


ファーストOAに占める101条拒絶の割合が、2つのタイミングで大きく下がっています。


続いて、USPTOが示すもう1つの指標である「不確実性」の変化についてのグラフも見ていきます。

不確実性とは、「特許適格性に関する審査官全体の拒絶率の振れ幅」のことを指します。

特許不適格である主題に対してファーストOAで拒絶した割合が、特定のテクノロジーについて審査官間でより不均一になると、不確実性の値が増加します。


グラフ2



Alice判決の後、不確実性のレートも101条拒絶率と同様に高まっていました。


グラフ4



そして不確実性についても、2018年のBerkheimerメモランダム、2019PEGの2つのガイダンスの公表されたタイミングで、それぞれ低下しています。

USPTOは、Alice基準をより明確なものにしようと取り組んできた成果として、このような変化が起きたと説明しています。

それは、Alice判決で示された特許適格性の判断基準が「わかりにくい」「拒絶されるのかどうか予測できない」と考えられてきたことの裏返しであるとも言えます。


USPTOによる審査基準の整備


Alice判決と呼ばれる2014年1月19日のAlice Corp. v. CLS Bank International最高裁判決は、米国の特許適格性に関するルールを大きく変えたとされています。

判決で示された「Alice基準」がどういうものかをごく簡単に説明すると、ある発明が特許を受けることのできる「適格性(eligibility)」があるかどうかを、2つのステップに分けて検討する判断方法です。

米国特許法101条に関する判例法理によれば、「自然法則(laws of nature)」「自然現象(natural phenomena)」そして「抽象的アイデア(abstract idea)」については特許の対象ではないとしているので、特にソフトウェア関連特許は「抽象的アイデア」に該当して特許を受けられないのではないか?という問題があります。


なお別記事でAlice判決やBerkheimer判決を紹介していますので、ぜひそちらもご覧いただければ幸いです。


【米国】Alice判決から5年、米国特許法101条の無効率が低下中?

  【米国】Alice判決から5年、米国特許法101条の無効率が低下中? | 株式会社ロジック・マイスター 米国特許法101条の特許適格性がないことを理由に無効となる割合が低下しているのではないか?ということを、最新の裁判例の分析から見ていきます。 株式会社ロジック・マイスター


ところでこのAlice基準は適用しようとすると簡単ではなく、裁判官や弁護士、審査官が、それぞれ異なる解釈を適用できる余地がありました。

「特許不適格な主題」に当てはまる範囲をより広く捉えるような考え方をする審査官がいれば、そのまま101条拒絶の増加につながります。

また、あちらとこちらの審査官では101条の判断が全然違う、ということも当然に起こりえます。それが「不確実性」の上昇という形で目に見えて表されていました。


USPTOはこの状況を改善するため、2014年にAlice判決が出てから数度にわたってガイダンスやメモランダムを発表し、審査官がより確実に101条の審査を行えるように審査基準を整備。

2018年のBerkheimer判決を受けて作成されたいわゆるBerkheimerメモランダム、そして2019PEGが出たことによって審査基準の安定化が図られ、Alice判決から続いたソフトウェア関連特許に対する101条拒絶率の増加に歯止めがかかったというわけです。


より一貫した予測可能な審査プロセスが確立されれば、出願人にとっても、101条拒絶を過剰に恐れることなく効率的な出願判断・審査対応ができるようになるメリットがあるといえます。


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