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中国の特許年金制度―ひと目でわかる金額・期限【2018年最新版】

Photo by Yiran Ding on Unsplash


年々拡大を続け、とどまるところを知らない中国経済。

中国市場に進出している企業では、急激に特許出願を増やしてきた競合中国企業への対抗などさまざまな理由から、中国でも積極的に出願する方針に切り替えたところも多いのではないでしょうか。

ところで、出願し取得した特許権を更新していくためには毎年、「特許年金」の納付が必要です。

しかし、この年金は特許の年数が長くなればなるほど高額になるもので、特許を取得するまでの費用と比較しても重い負担となっていきます。

またとある企業知財部の方からは、「急に中国の代理人から特許年金の請求書が送られて来たけれども、なかなか年金についての情報が手に入らなくて困った」という話も耳にしました。

そこで今回、日本とは異なる点も多い中国の特許年金制度について情報をまとめましたので、ぜひご参考になれば幸いです。


中国の特許年金制度


目次

  1. 金額と納付期間

  2. 年金納付の「年度」に関するルール

  3. 日本の特許年金制度との比較

  4. 滞納金

  5. 権利回復請求

  6. 中国の特許関連費用一覧


1. 金額と納付期間

まずは、現在の特許年金(中国語では「年费」)の金額や納付期間がそれぞれどのようになっているかを、表で確認してみましょう。



年度
金額

1~3

900 元
4~6
1,200 元
7~9
2,000 元
10~12
4,000 元
13~15
6,000 元
16~20
8,000 元

※1 2018年7月1日時点の情報である「专利审查指南2010」(日本語版「専利審査指南」はこちら)をもとに作成しております。
専利審査指南は2017年4月1日に改正がありましたが、年金にかかる部分については変更がありませんでした(改正内容はついては
こちらをご参照ください)。
最新の情報については、中国・国家知識産権局の情報をご確認ください。

※2 上記は国家知識産権局に納付する庁費用の金額であり、代理人費用については含まれておりません。

※3 為替レートは2018年7月1日現在、1元 ≒ 16.6円となっています。


このように、年度が進んでいくごとに納付する金額が上昇していきます。(「年度」とは何か、という点については後述します)

たとえば20年間(特許権の満了まで)年金を払い続けるとした場合、合計金額は74,300元、日本円に直すと約123万円となります。

ちなみに、かつて中国では出願後、まだ登録になっていない期間中も「維持年金」を払う必要がありましたが、現在は廃止されています。


2. 年金納付の「年度」に関するルール

中国の特許年金を支払ううえで特に重要なのが、納付年度の決定方法です。

これについて、専利審査指南には以下のように書かれています。

第五部分 専利出願および事務処理

第九章 専利権の付与と消滅

2.2.1.1 年度


出願日から起算される専利年度は、優先権日や権利付与日に関係なく、暦年とも必然的な関連性がない。例えば、ある専利出願の出願日が1999年6月1日である場合、当該専利出願の第1年度は1999年6月1日から2000年5月31日であり、第2年度は2000年6月1日から2001年5月31日になる。以降もこれに準じて類推する。


つまり、年度は出願日から始まることになります。

また、年金納付期限は次のように決められます。

第五部分 第九章

2.2.1 年金


専利権付与年の年金は、登記手続と同時に納付しなければならない。以降の年金は前年度の期限満了前に納付しなければならない。費用納付期限の満了日は当該年度における出願日の対応日になる。


各年度の納付期限は、出願日に対応する前年度の日付が満了日となります。

たとえば、2018年7月9日に出願された特許については、第4年度の年金の納付期限は、第4年度の出願日に対応する2021年7月9日ということです。第3年度の最終日(2021年7月8日)とは異なることにご注意ください。

専利審査指南にも、具体例が記されています。

第五部分 第九章

2.2.1.2 納付すべき年金の金額


各年度の年金は、費用徴収表において規定された金額に従って納付する。例えば、ある専利出願の出願日が1997年6月3日である場合、もし、当該専利出願が2001年8月1日に専利権が付与され(専利権の授権公告日)、そして専利権者は登記手続を行う際に、すでに第5年度の年金を納付していれば、当該専利権者は遅くても2002年6月3日に第6年度の年金基準に従って第6年度の年金を納付しなければならない。


ところで「専利権付与年」つまり登録になった年度の年金は、「登記手続と同時に」納付することとありましたが、同時とはいつの時点なのでしょうか?

これについては以下のような記述があります。

第五部分 第二章 専利に係わる費用
1. 費用の納付期限


(6)専利登録費、専利権付与年の年金及び公告印刷費の納付期限は、出願人が専利局による専利権付与通知書と登記手続実行通知書を受け取った日から起算する2ヶ月以内である。


3. 日本の特許年金制度との比較

納付年度の仕組みは、中国と日本の特許年金制度上の大きな違いとなっているため、ここで一度それぞれがどうなっているのかを整理してみましょう。

まず中国の特許年金について、ここまでの内容を図に表すと以下のようになります。


図1:


一方、図1の中国特許と同じ日に出願し、同じ日に登録された日本特許があったとします。

日本特許の場合には、年金納付期限はどのようになるでしょうか?


図2:


2国の特許年金制度を比較してみると、以下のような違いがあることがわかります。


  • 年金年度の起算日
    日本では登録日から年金年度がスタートするのに対して、中国では出願日から年金年度がスタートします。
    したがって、日本では最終年度(先ほどの図では第18年度)の途中で特許権の存続期間が満了することがありますが、中国では第20年度の最終日が特許権の存続期間最終日と一致することになります。


  • 登録時点の年金支払い
    日本では、登録から1ヶ月以内に、第1年度~第3年度までの年金(特許料)をまとめて支払う必要があります。
    一方、中国では登録から2ヶ月以内に、登録日が含まれる年度(図では第3年度)分の年金を支払う必要があります。これは「登録費(专利登记费)」とは別に納付するものです(専利審査指南 第五部分 第九章 1.1.3 登記手続)。


なお、中国でも日本と同様に、複数年度分の年金を一括して納付することは可能です。

ただ、前述のとおり中国では最初の3年度分を一括で払う義務がなく、また早期にまとめて納付するメリットもあまりないため、中国で実際に一括納付している企業はそれほど多くないようです。


4. 滞納金

中国では、納付期限までに年金を納付できなかった場合に、期限から6ヶ月以内であれば「滞納金」を追加で支払うことによって、年金を納付することができます。

下の表のように、期限を過ぎてしまった期間の長さによって金額は異なります。


超過期間
滞納金
1ヶ月未満
(なし)
1ヶ月~2ヶ月以内
年金全額の
5%
2ヶ月~3ヶ月以内
10%
3ヶ月~4ヶ月以内
15%
4ヶ月~5ヶ月以内
20%
5ヶ月~6ヶ月以内
25%



たとえば第4年度の年金を、期限から2ヶ月と10日遅れて納付する場合、

(第4年度の年金額)1,200元 × (2ヶ月~3ヶ月以内の滞納金率)10% = 120元

これが支払うべき滞納金の金額となります。


5. 権利回復請求

この6ヶ月という期間も過ぎてしまった場合には、特許権は失効してしまいます。

ただし救済措置として、一定の条件を満たせば、いったん消滅してしまった特許権の回復を請求することができます。

专利法实施细则(専利法実施細則)」第6条の規定は以下のとおりです。

第六条 当事者が不可抗力の事由により、専利法又は本細則に規定する期限或いは国務院特許行政部門が指定した期限に間に合わなかったため、その権利を消滅させた場合は、障碍が取り除かれた日より起算して2ヶ月以内に、遅くても期限の満了日より起算して2年以内に、国務院特許行政部門に権利の回復を請求することが出来る。

[2] 前項に規定される状況を除き、当事者がその他の正当な理由により、……期限に間に合わなかったため、その権利を消滅させた場合、国務院特許行政部門の通知を受け取った日より起算して2ヶ月以内に国務院特許行政部門に権利の回復を請求することが出来る。

[3] 当事者が本条第1項又は第2項の規定に基づき権利の回復を請求する場合、権利回復請求書を提出し、理由を説明して、必要に応じて関連証明書類を添付した上、権利消滅前に行うべき関連手続きを完了しなければならない。本条第二項の規定に基づいて権利の回復を請求する場合、さらに権利回復請求費を納めなければならない。

 (略)

※読みやすさのため項番号を書き足しています

第6条の第3項にあるように、権利回復の請求には年金そのものや滞納金とは別に、「恢复权利请求费(権利回復請求費)」として1,000元が必要となります。


6. 中国の特許関連費用一覧

これまで本記事に登場した各種費用を含む、中国の特許等に関する費用一覧は、中国・国家知識産権局の下記のページで閲覧できます。

国家知识产权局收费公示

※国家知識産権局のこちらのページの最下部に、最新版のリンクがあります。


また、中国では「中华全国专利代理人协会」(中国の弁理士会)が2005年に決定した、代理人手数料の標準価格が存在しています。

これには法的拘束力はないものの、できるだけ尊重すべきものとされており、実際に多くの中国事務所がこの標準価格に従って料金設定をしているそうです。

涉外专利代理收费标准

※中国「百度文庫」にアップロードされている表へのリンクです。なお、この表では庁費用の金額が古いためご注意ください。


さいごに

日本とは違う中国の特許年金制度の概要について、ご理解いただけましたでしょうか。

ご不明な点や、より詳しいご質問などがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。




監修:

SBZL IP FIRM(北京商专永信知识产权代理事务所)
靳満堂 副所長 弁理士


梶・須原特許事務所
北村邦人 弁理士




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