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開発者に特許侵害リスクを効率よく避けてもらうために、知財部でできること

Photo by Daniel Lerman on Unsplash



製品開発プロセスのなかで問題となる他社特許を早期に見出して、知財部がサポートできる体制を整えることは、企業の知財部として永遠のテーマかもしれません。

本記事では、これまでの私自身の経験から、実際にメーカー知財部在籍時に行ったサポートについてご紹介させていただきます。


開発者のための知財サポート


開発進捗スケジュールの報告会に参加させてもらう


知財部員のなかで当該開発部門の担当者を設けて、開発進捗スケジュールの報告会議に参加する体制をとっている知財部も多いと思います。

こうすることで開発の各ステージでのリエゾン(発明発掘)と、特許侵害リスクの検討を随時行うことができます。

製品のサンプルが出来上がってしまうと侵害回避を行うことが難しくなってしまうことから、早期に問題点を見出すために積極的に関わっていくことが重要です。

また早期発見だけにとどまらず、開発の方とのコミュニケーションのハードルを低くすることで、様々な知財業務の効率化が図れることと思います。


開発テーマごとに要注意特許の要約書を作成・配布し、定期的に説明会を開催する


多くの開発者にとって、特許文献は独特な書き方のせいで読みにくく、内容(特に権利の内容や範囲)がわかりにくいと感じられていると思います。

特許侵害リスクを抱えたまま開発が進行することを未然に防ぐため、要注意特許については、まず抵抗なく読んで知ってもらうことが重要になります。

そこで、権利内容や特許ごとの違いがわかりやすいようビジュアル化した資料を作成し、場合によっては説明の時間も確保することで、開発者にも要注意特許を把握してもらえるように働きかけます。


権利侵害に関する基本的な知識について社内セミナーを開催する


どのような場合に権利侵害・非侵害となるかについて、新入社員、中堅社員、管理職をそれぞれ対象に、定期的にセミナーを開催します。

社員で講師を務めるほか、外部の弁護士や弁理士(過去には特許庁の審判官に依頼したこともあります)を講師に招いて開催していました。

また、開発の一部を他の企業に委託している場合も、権利侵害のリスクが無いかが気になるところです。

委託先に教育するというのはなかなか難しいので、特許侵害責任の所在の明確化と、損害額の負担に関する特許補償条項を開発委託契約に明記することで、リスク軽減を図っていました。

この際には、開発委託先の担当技術以外をクリアランス調査対象とすることで、特許調査を効率化できるという利点もありました。


開発者に自分で特許調査をしてもらうメリットとその方法


企業によっては、開発部門に特許調査の担当者を置いてもらうことがあると思います。

もちろん、開発部門の全体を対象として調査のやり方の講習を行い、全員に一定の調査スキルを持ってもらうようにしている企業もあるかとは思いますが、私の経験からすると、特許調査はある程度の頻度で実施しないと、その調査ツールの使い方を忘れてしまうようです。

そこで開発者の1人を知財担当窓口としてもらって、その方に開発内での特許調査をお願いしていました。


開発内での調査としては、例えば次のような調査が開発者から知財担当窓口の方へと依頼されていました。


  • ある材料をA社から購入しているが、他にこの材料に関する開発を行っている企業が無いか調べる
  • 関連する製品のコンペチタ(競合他社)が、最近どのような出願をしているかを見て、開発動向をウォッチングする
  • 自分の発明に対する先行技術はどのようなものがあるかを調べて、発明提案書作成の参考にする
  • 上司から、「提案のあった技術は、おそらくB社の特許があったのではないか」と指摘され、知財部に相談する前に調べる
  • 開発に行き詰まり、他社は同様の問題にどのように対処しているか調べ、ヒントとするための特許文献を入手する


他にもあったかと思いますが、基本的に開発者に調査をしてもらうことで、知財部のマンパワーの補填と、開発者が知財部に技術説明をするなどの相談時間の短縮化が図れることが主なメリットでしょうか。

付随的には、ご存じのように特許明細書は、開発のヒントになる文献となりえることから、発明発掘の観点からも開発者がそれら文献に接することで、「いま開発中の技術は、出願価値があるのではないか」といった気づきにも貢献することがあったと記憶しています。

なお調査ツールによっては、分類などの専門的なものは使わず、特許に詳しくない開発者でも使い勝手がよさそうなツールが出ているので、なるべく開発目線で使いやすいツールを採用された方が良いかと思います。


ロジック・マイスターでは、メーカー知財部に実際に所属し、あるいはお客様の知財業務をサポートさせていただいた豊富な経験から、貴社のお困りごとを解決するお手伝いをさせていただきます。

気になることやお悩みのことなどございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

松本 美司

松本 美司

株式会社ロジック・マイスター 代表取締役

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