新規事業の特許クリアランス、どこから手を付けるべき?
Photo by Andrew Neel on Unsplash
企業活動においては、既存事業の領域に留まらず、さらなる事業拡大のチャンスを求めて未経験の市場・業界に進出していくことが盛んに行われています。
有名企業でも、検索エンジンのGoogleが自動運転車の開発を始めたり、写真から始まった富士フイルムが化粧品事業でも地位を築いたりするなど、誰にも予想できなかったような新事業への進出の例はたくさんあります。
新規事業を始める際には、知財リスクを極力排除するためにクリアランス調査(侵害予防調査)を実施することになりますが、その分野での知見がない状態で、どこから調査に手を付ければよいかわからない、と感じることもあると思います。
今回は、新規事業に対する特許クリアランス調査を始めるときの手がかりをまとめてみました。
過去事業から継続性のある新規事業の場合
新規といっても、すでに自社で行っている事業と全く無関係ということはあまりなく、既存事業から派生して新規事業を展開することの方が多いかと思います。
オーソドックスな特許クリアランスは、旧製品と新規製品の差分の分析をして、特に同業他社がその差分に関連する特許を出願していないかを調べることでしょう。
調査の結果、自由技術であることが分かればより安心できるので、出願日から20年以内(通常の特許存続期間)のものに限定せず調べてみることが良く行われていると思います。
過去事業とは異なる新規事業の場合
これまでの自社事業領域とかけ離れた新規事業に挑戦する場合には、どこまでが自由技術で、どこからが危険領域なのかを見極める必要があるかと思います。
その事業における先駆的な企業がある場合、まずはその企業の保持する特許をマップにまとめて、自社が事業化しようとしている製品との対比をすることから始めるのはどうでしょうか?
なお、先駆的なメーカーについては、開発部門と協議して情報を共有してもらうと良いでしょう。
この段階で、新規事業における特許用語の理解と知識を増やし、その事業における課題や、改良が行われることの多い構成、効果などの知識を、マップ作成時に瞬時に認識できるような工夫を施すのも良いかもしれません。
もう一つの観点として、後続メーカーが先駆的なメーカーの特許をどのようにして回避しているかを認識するために、後続メーカー製品と先駆的メーカー特許との相違点をまとめてみるのも良いかもしれません。
他社間で特許訴訟が存在する場合には、その訴訟に使用された特許の内容と、訴訟における論点や最終的な結論、並びに権利者側の主張点をまとめて、問題になりそうな構成を外すような対応をすることもあると思います。
前述した訴訟は、先駆メーカーへの異議や無効審判などの経緯がある特許についても優先度を高めて検討することも良く行われていると思います。
私の場合には、ここまで検討すれば、どこまでの構成が自由技術として安心域にあるかを判別できると考えています。
そこで次のステップとして、安全領域からはみ出す部分がクリアランス調査として注目すべき点であると認識してクリアランス調査を行ってきました。
つまり、これ以降は前述の[過去事業から継続性のある新規事業の場合]と同様のアプローチ(旧製品と新規製品の差分を明確化し、その点に関連する特許を調べる)で、クリアランス調査を行っても良いのではないでしょうか。
クリアランス調査を具体的にどうやって進めればよいかなど、ご質問がありましたらロジック・マイスターにお気軽にお問い合わせください。