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中国「自動車標準必須特許のライセンス指示」発表。簡単に解説します

Photo by CHUTTERSNAP on Unsplash


2022年9月13日、中国自動車技術研究センターと中国通信院により、≪自動車標準必須特許のライセンス指示≫が発表されました。

「指示」において、”自動車業界内の全ての産業リンケージがライセンスの対象になる”ことが明示されました。つまり、自動車メーカーだけに限らず、部品メーカーもライセンスの対象になるということです。

これにより、中国の「インテリジェントコネクテッドビークル(intelligent connected vehicle、以下「ICV」)」産業の発展が加速することが期待されています。


目次[非表示]

  1. 1.指示内容のまとめ
    1. 1.1.自動車標準必須特許のコア原則
    2. 1.2.合理的なライセンス費用の計算原則
  2. 2.まとめ


指示内容のまとめ


中国では、ICV関連技術が急速に発達しており、無線通信技術の必要性も高まっています。

しかし、通信産業界と自動車産業界では特許の運用方法に差異があり、特許紛争は世界的に増える一方となっています。

自動車産業のさらなる発展を促進するため、指示には4つの「コア原則」が掲げられました。またライセンス費用の計算原則についても明確化されており、自動車技術の標準必須特許のライセンスについて参考になります。


以下、コア原則と計算原則についてそれぞれ簡略に説明します。


自動車標準必須特許のコア原則


1. 利益のバランス

ライセンス費用を合理的に維持し、特許権者の利益を確保しながら、標準技術について広く応用させる。


2. 公平的、合理的、無差別的

FRAND条件でライセンス費用を合理的に維持する。また、実際同一または相似条件の実施者に対しては、同じ条件のライセンスで許可すべきであり、不当な拒否または不合理な条件の追加は禁止される。


3. 自動車業界内の全ての産業リンケージがライセンス許可の対象

自動車業界内の全ての産業リンケージがライセンスの対象になる。同一産業リンケージにおける異なる階層のメーカーに対して、ライセンス費用を繰り返し請求するのは禁止される。


4. 業界ごとの差異に対する交渉

標準必須特許のライセンス許可方式と、自動車産業の慣行とが異なる、または逸脱している場合には、積極的かつ善意の方向で交渉すべきである。


合理的なライセンス費用の計算原則


1. 標準必須特許のライセンス費用の計算基数

標準必須特許が実際的な技術効果をもたらしている自動車製品単位を基に、ライセンス費用の計算基数を決定する。無関係の製品単位は計算基数に含まないようにする。

また、同一産業リンケージにおいて異なる階層であっても、同一自動車製品に対する計算基数はおおむね同様とすべきである。


2. ライセンス費用の考慮因数

ライセンス費用は、実際の価値の貢献、累積ライセンス費用、標準必須特許の所有数、特許の地域分布などから考慮すべきである。


3. 累積ライセンス費用の制限

標準必須特許のライセンス費用の和は、合理的な上限値で制限する。例えば、産業における利益の一定の割合とするなど。


4. 合理的にライセンス費用の計算方法の選択

トップダウン、あるいは比較可能なライセンス契約などの方法でライセンス費用を計算する。

しかし、どの方法でも、特許権者の標準必須特許所有率と地域分布を考慮すべきであり、同時に特許権者の標準必須特許に対する実際的な貢献および提案状況をも考慮すべきである。


以上、本件「指示」にて掲示されたコア原則・ライセンス費用計算原則についてご紹介しました。

中国語原文は以下からご覧いただけます。


【官方】中汽学会知识产权分会、IMT-2020(5G)推进组等联合发布“汽车行业标准必要专利许可指引(2022版)”


まとめ

中国は近年、新エネルギー自動車の発展を推進しています。無線通信は次世代の新エネルギー自動車において、必須と言っても過言ではありません。

通信業界は自動車産業から利益を得るため、“特許戦争”を行っています。

例えば、2021年にはNokia対Daimler、Huawei対Volkswagenの訴訟が提起されました。中国の自動車産業も、標準必須特許の潜在リスクに気付いていることでしょう。

自動車産業の研究開発を守りつつ、標準必須特許の特許権者の利益も確保するため、≪自動車標準必須特許のライセンス指示≫の発表は必要であると考えられます。

「指示」の発表により、自動車に関連する標準必須特許のライセンス方法を明確化したことで、特許権者に過大の利益を与えることなく、自動車産業が安心して技術を開発することができるようになることが期待されます。


日欧米も、標準必須特許に対してそれぞれ異なる政策を持っています。興味がある方は、下記の参考資料から各国の政策についてご覧ください。


標準規格必須特許に関する取組 (日本自動車工業会)

ロジック・マイスター 編集部

ロジック・マイスター 編集部

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