catch-img

特許調査会社を使いこなそう!企業知財部経験者から見た調査会社のメリットと注意点とは?

Photo by Campaign Creators on Unsplash


特許を新たに出願するときや新製品開発、競合調査など様々な場面で、特許データベースを検索し他社特許の情報を収集する特許調査が行われています。

特許調査は社内の知財部門や開発部門で行われることもあれば、外部の特許調査会社に依頼することもあると思います。しかし色々な理由から、なかなか調査会社に特許調査を頼みにくいという声をいただくこともあります。

ロジック・マイスターの特許調査スタッフ(サーチャー)の多くは、企業知財部での業務も経験してきています。そこで、特許調査を依頼する側・される側の双方の観点から、上手に調査会社を利用するためのヒントをお伝えできればと思います。


目次[非表示]

  1. 1.調査会社に依頼するメリット・デメリット
    1. 1.1.メリット
    2. 1.2.デメリット
  2. 2.特許調査の依頼フロー
    1. 2.1.フロー図
    2. 2.2.それぞれのやり取りの中身と所要時間
  3. 3.見積をスムーズに進めるために
  4. 4.調査会社に依頼するのが適している特許調査とは
    1. 4.1.調査会社に依頼するのが適している特許調査
    2. 4.2.調査会社に依頼するのが適さない特許調査
  5. 5.調査会社に依頼するときに心配なことは?
  6. 6.まとめ


調査会社に依頼するメリット・デメリット

調査会社に特許調査を依頼することによって、どんな成果が期待できるのでしょうか。

特許調査を社内で行う場合と比較して、そのメリットとデメリットについて確認していきます。


メリット

特許調査を社内で行う場合と比較して、調査会社に依頼することには以下のメリットがあります。


調査以外の業務に注力できる

特許調査業務は時間がかかり、すべてを社内でやろうとすると人的リソースを圧迫するおそれがあります。これを調査会社が代わりに請け負うことで、依頼人は時間的にも労力的にも余裕が確保できます。その分、社内でしかできない業務により多くの時間・人員を割り当てることが可能になります。


新規の技術分野でも調査できる

新規事業などへの参入により新たな技術分野の特許調査が必要になった際に、その分野の知識が少ないと目星がつきにくく、社内で一から調査を実施すると時間がかかります。そのようなとき、調査会社には多様な技術分野の知識をもったサーチャーがいるため、調査会社を利用することでより早く調査結果を得ることができるでしょう。


俯瞰的視点からの調査・分析ができる

技術動向調査(技術分野ごとの特許出願状況などを調べ、トレンドを把握するための調査)などでパテントマップを作成することがありますが、依頼人自身の専門分野であればあるほど、これまで社内に蓄積された知識や先入観の影響を受けて解析結果が偏ってしまうことがあります。一方、調査会社は全体を俯瞰して分析しやすい立場にあり、違った切り口からの発見を提供できる可能性があります。


自社にないデータベースや言語での調査ができる

外国特許データベースなどを自社で契約していないが外国調査が必要になった、という場面でも調査会社を利用する選択肢があります。特に近年は中国特許・実用新案の出願件数が爆発的に増えていますが、機械翻訳でない中国語原文で調査したい場合にはそれが可能な調査会社に依頼するのが良いでしょう。


デメリット

一方で、調査会社を利用することにはいくつかの不利な部分もあります。


費用が発生する

調査会社に依頼する場合には調査費用を支払う必要があり、依頼人の社内で実施する(あるいはそもそも特許調査をしない)場合と比較して、費用対効果として見合っているどうかを検討しなければなりません。


社内外の調整に時間がかかる

外国特許調査のように外注費用が高額となる調査では、依頼を決定するために必要な稟議や決裁・承認までのステップが長くなる傾向にあります。それだけでなく、調査会社への調査説明や見積もりなどのやり取りにも時間を要します。結果として、社内で特許調査を行うよりも時間が掛かってしまうことがあります。


専門的知識や情報の不足により、期待する成果が得られない可能性がある

サーチャーの技術知識は特許公報と市場に出ている情報に限られており、最先端の専門的知識については依頼人のそれに勝ることは基本的にないと考えたほうが良いでしょう。製品開発計画の方向性や業界のトレンドなどの情報は社内にいないと蓄積できませんし、それらを把握していないと成り立たない調査もあります。


情報管理の手間が発生する

侵害予防調査など、調査内容によっては開発中の情報が含まれるケースもあり、調査会社に対してどこまでを開示してよいか、NDA(秘密保持契約)もふまえて慎重に検討する必要も出てきます。


特許調査の依頼フロー

特許調査を調査会社に依頼するとして、どんなやり取りが行われ、どれくらいの時間がかかるものなのか、イメージしにくいということもあるかと思います。

ここでは依頼から納品までの流れについて、依頼人と調査会社それぞれの立場から見てみましょう。


フロー図



図は一例です。案件の性質や社内体制などによって多少の違いはあると思いますが、一般的な業務フローとしてはこのような感じで進んでいきます。


それぞれのやり取りの中身と所要時間

打ち合わせ

調査会社に連絡してから打ち合わせまでには、調査会社(場合によっては社内関係者も)の日程調整も含めて、数日かかるでしょう。この打ち合わせは調査内容や技術面の情報共有のために行うもので、調査済み案件の延長線上にあるような調査であれば、打ち合わせ無しで進めることもあります。


見積もり

続く見積作業には、1~2週間程度必要になります。調査会社が作成した検索式を、調査対象との合致や件数の大小をみながら調整する作業が必要なケースが多く、依頼人と調査会社の間でやり取りが発生します。


稟議・決裁

見積が確定すると、依頼人の社内で稟議の上、承認を得る必要があります。決裁までに要する時間は、会社規模や組織体制、決裁権限など会社ごとの事情で大きく変わる部分で、早ければ1週間以内、長いと数週間かかってしまうこともあります。調査料金が高額になれば部長、役員、社長などの決裁が必要になってきて、より時間がかかることになります。


調査

正式に依頼があってから、調査会社は調査をスタートさせます。納品までにかかる時間は、標準的な国内調査で2~4週間程度といったところです。読み込まなければならない特許文献の件数や、どれくらい詳細な調査報告を求めるかなどの要素によって作業時間が増減します。


ここまでを合計すると、調査会社に特許調査を打診してから調査結果が納品されるまで、比較的スムーズに行った場合でも4~5週間程度はかかることがわかります。

調査結果によっては、弁理士による鑑定などさらなる対応が必要になるケースもあります。

これらのことと時間的制約、つまりいつまでに調査結果が必要なのか(製品販売のタイミングや異議申立の期限など)をふまえて、調査会社に依頼するかどうかを検討していただきたいと思います。


見積をスムーズに進めるために

調査案件ごとに調査料金を算出する場合、あるいは決まった金額の範囲で調査を実施する場合などいくつかのパターンがあると思いますが、いずれにしても調査をスタートする前にまず調査会社が見積を行うことになります。

この見積段階でお互いの情報や目的がうまく共有できていないと、行ったり来たりのやり取りの回数が増え、調査着手までに時間が掛かってしまいます。

調査会社としては、以下の情報があると見積作業をスムーズに進められるでしょう。


調査対象となる技術内容に関する資料

サーチャーが何を対象として調査すればよいかを正確にイメージできるような、仕様や図面等の資料があることが望ましいです。

見積段階では、数千万件に上る特許データベースの中から調査対象に近いものがヒットするように検索する一連の「検索式」を作成し、ヒット件数を見ながら調整していくことになります。

例えば侵害予防(クリアランス)調査であれば、販売予定の製品の(特許的な)特徴となる部分や、他社特許を侵害しないか特に気になる部分といったものが分かれば、よりクリティカルな対象に絞った効率的な調査が可能になります。これは調査の料金、スピード、精度のどれにも影響する重要なポイントです。


ピックアップする特許文献のイメージ

特許調査では、特に調査対象と近い内容の文献を、検索式で指定した範囲からピックアップします。

もし事前に依頼人側で「この特許が調査対象と似ているな」という特許文献等を見つけている場合には、それを基準にして最適な範囲の検索式を作りやすくなるので、あらかじめ調査会社に共有していただくことをおすすめします。


調査結果 / 納品物のイメージ

報告書をどの程度詳細なものにするか(重要な文献をピックアップするだけか、重要度のランク付けもするか、コメントもつけるかなど)や、パテントマップであればバブルチャートや3Dマッピングなどを使うか、何枚のマップが必要か…などによっても、作業時間と料金が変わってきます。

また特許包袋(審査・審判書類)の請求や弁理士による鑑定などが必要な場合も、別途費用が発生します。


予算の上限

調査費の予算があらかじめ決まっている場合にはそれを事前に伝えていただければ、予算内で最も効果的な調査ができる範囲の検索式となるように作成することができます。


調査会社に依頼するのが適している特許調査とは

特許調査とひとくちに言っても、調査対象技術や作業内容によって千差万別です。

その調査の性質によっては、調査会社にやってもらったほうが良い調査もあれば、逆にあまり成果が期待できない、自社内でやったほうが良い調査というのもあります。


調査会社に依頼するのが適している特許調査

では、調査会社に頼むべき調査とはどんなものでしょうか?


自社の専門以外の技術分野の調査

前述の通り、新規事業立ち上げなどのタイミングで、依頼人にとって知識やノウハウが不足している技術分野を調査する場合は調査会社が特に力を発揮しやすいです。


古い文献に遡って調べる調査

調査会社のサーチャーは過去の特許情報が蓄積されたデータベースから、時代を遡って必要な情報を入手することが主な仕事であり、こうしたスキルに長けています(もちろんプロとして、常日頃から最新技術の情報収集にも努めているのは言うまでもありませんが)。特に無効資料調査は、無効化したい特許の出願日よりも前に出願された古い文献を探すもので、調査会社の特性が活かされやすいといえます。


大量に特許文献を読み込む調査

多くの事業会社の知財担当者の方にとって、特許調査以外にも多くの業務(例えば出願や知財管理、ライセンス交渉など)があるなかで、大量の特許文献を読むとなると時間が足りないというのが実情かと思います。一方、調査会社のサーチャーは特許文献を効率的に読み込み、不要な情報を除去して重要なものをピックアップすることを得意としているので、目を通すべき特許文献の数が多ければ多いほど、調査会社に依頼するメリットは大きくなります。


調査会社に依頼するのが適さない特許調査

反対に、調査会社に依頼しても成果が得られにくい特許調査というものもあります。


依頼人のほうが詳しいような技術内容の調査

依頼人の専門分野の最先端技術に関する調査や、調査対象かどうか容易に判断できないような事情がある場合です。

後者について例を挙げるとすれば、乗用車のパワースライドドア(力を入れなくても自動で開閉できるスライドドア)にのみ関連する機構の特許を調査したいのに、パワースライドドア用の機構なのか旧来のスライドドアで使う機構なのかが、クレームを見てもよくわからない…というようなケースが当てはまります。

日頃から見慣れていて知識のある当該部品のメーカー担当者であれば判断できることでも、調査会社のサーチャーでは関連性の有無がわかりにくく、かといって重要な文献を「関連性なし」として誤って除外してしまうわけにもいかないため、結果としてノイズの多い調査結果となってしまうおそれがあります。


社内でやったほうが早い調査

外部の調査会社に依頼する場合、調査対象の説明や場合によってはその前提となる知識などを共有する必要があり、日程調整も含めて諸々の手間がかかることは否めません。細々した調査など、「分かっている」社内だけで進めたほうが早く終わるようなケースも当然あります。


二度手間になるような依頼方法

例えば、「このリストから無関係な特許文献(ノイズ)だけ除外してほしい」というような依頼の仕方です。

このとき、無関係であるかどうかの判断基準(タイトルやクレームに〇〇と記載があるものは除外、など)を明確に示してあげないと(それが困難なケースも多いですが)、大してノイズが減らず結局は社内で全件をチェックしなければならなくなった…ということも起こり得ます。

こうした二度手間は時間的にも金銭的にもマイナスになってしまうので、中途半端な調査結果にならないように依頼方法を工夫する必要があるでしょう。


目的の違う調査を一挙に依頼しようとする依頼方法

例えば「先行技術調査のついでに侵害予防調査もできますよ」と、異なる複数の目的の調査を1件の調査としてまとめて行おうとする調査会社もありますが、あまりおすすめできません。

値段も安く一見すると親切なようですが、先行技術調査と侵害予防調査では検索式の構成、公報の読み方、報告書の書き方などが異なります。これらを同時に行おうとすると正確な調査結果が得られずお金の無駄になってしまうため、同じ会社に依頼するとしても別々の調査案件として取り扱うことを推奨します。


調査会社に依頼するときに心配なことは?

ここからは、ロジック・マイスターに実際に寄せられたご質問の中で、多くの方が特許調査を調査会社に頼むにあたって不安に感じられているポイントについて回答していきます。


Q:開発担当者からもらった情報では発明の内容が曖昧で、どのように調査を依頼すべきかわからない

A:調査会社にご相談いただく時点では、発明内容や製品仕様が固まっていなくても問題ありません。どの部分が技術的特徴(既存の技術や製品と差別化できるポイント)となり得るかをお客様との打ち合わせで明確化し、どのような特許調査が最も効果的かをご提案します。


Q:調査を依頼したいが、技術内容を説明できる資料が用意できない

A:特許調査にあたっては、設計図のような精巧な図面や仕様書が必要というわけではありません。試作品の写真や手書きのイラスト・メモなどの簡単な資料でも大丈夫ですので、調査対象の技術が把握しやすいような資料があるとスムーズに打ち合わせができます。

またNDAも締結しますが、社外に出せない情報は別途黒塗りなどしていただき、必要部分のみ開示していただければ問題ありません。


まとめ

特許調査を外部の調査会社に依頼することのメリット・デメリットや依頼の流れ、気をつけていただきたいことなどについてご紹介しました。

調査会社の持っている力を最大限有効に利用するためのヒントとして、ご活用いただければ幸いです。

特許調査について気になることやご相談がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!


ロジック・マイスター 編集部

ロジック・マイスター 編集部

ロジック・マイスター編集メンバーが、特許・知的財産に関わる皆様のために様々な切り口からお役立ち情報を紹介します!

こちらの記事もおすすめ

お問い合わせ

特許調査や外国出願権利化サポートに関するお見積のご依頼、
当社の事業内容についてのお問い合わせなどございましたら、
お気軽にご相談ください。

おすすめの資料

新着記事

よく読まれている記事

タグ一覧

サイトマップ