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外観的に侵害が立証可能なソフトウェア特許を。とあるゲーム企業の実体験

以前お会いしたことのあるゲーム企業(仮にA社とします)の知財部の方から、特許の書き方について興味深いお話を伺ったので、今回はそのことについてシェアしたいと思います。

ソフトウェア特許が侵害されたら?

自社技術を特許化することで得られる利益はさまざまですが、その中には損害賠償請求や差止請求など、いわゆる「権利行使」ができるという点もあります。


「いざ特許権を行使しようというときに、きちんとその役目を果たせるような特許を取得しておきたい。そのためには、他社の侵害行為が外から見てもわかりやすいような請求項(クレーム)のかたちで、特許にすることが大切だ

と、この方は話していました。


特にソフトウェア特許に関しては、このことがとても重要なポイントとなってくると言われています。


なぜなら、しばしば

「プログラムを解析できればうちの特許技術を使っているかどうかがわかりそうだけれども、それは実質的に不可能……」

という状況に陥ってしまうからです。


このことについて詳しく聞くと、A社知財部の方がかつて経験した手痛い失敗談を語ってくださいました。


「特許の侵害を立証できない…」ゲーム企業の苦い経験

A社は家庭用ゲームを製造販売している会社でしたが、あるとき突然、競合他社と特許訴訟を行わなければならないことになりました。


そこで競合の製品を取り寄せて調べ、自社特許との対比を行なっていった結果、ようやく「この特許が侵害されているのではないか」と思われる1つの特許を見つけることができました。


しかし、ここで話は終わりません。

A社は訴訟の準備のため弁護士さんに相談すると、「競合の製品が特許を侵害していることを立証する資料を作成する必要がある」と言われました。


ところが対象となった自社特許は、内部のプログラム動作に関する部分に限定されたクレームとなっていたのです。


この特許侵害を立証するためには、まず競合製品のプログラム情報を入手しなければなりません。

とは言っても、プログラムを製品から吸い出して調べるという手段はセキュリティの問題から難しいことでした。


また仮にこれが手に入ったとしても、膨大なプログラム情報を解析し、ノイズを取り除いて侵害の立証に必要な部分だけを特定するということは様々な制約から困難である、といったことが判明しました。


そのためA社は特許を取得しているにもかかわらず、結局は権利行使を諦めなければならなくなってしまいました。


まとめ

上に登場したA社も、かつて8ビットゲーム機を使ってROMカセット等を動かすゲームが主流だった時代のように、「いざとなれば直接データを吸い出せば良い」という考えを持っていたのかもしれません。


しかし現代のゲームはそもそも物理的なディスク等で配布されることなく、web上で動作するものやダウンロードして遊ぶものが主流になってきています。


技術の進歩に伴って高度に複雑化しているうえに、厳重なセキュリティで守られている昨今のソフトウェアにおいては、もはやプログラム解析による特許侵害の立証という方法は現実的ではなくなっているようです。


A社ではその後、他社が侵害したかどうかをより外観的に立証できるような形でクレームを作成するよう、弁理士/弁護士さんと相談しながら特許出願しているとのことでした。


皆様の知的財産戦略を考える上でのヒントとなれば幸いです!

ロジック・マイスター 編集部

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