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調査会社が無効資料に公開公報を選ぶ理由と、その重要性



Photo by Elisa Calvet B. on Unsplash


特許無効資料の調査において、調査会社が公開公報を選ぶ理由には、日本の特許制度や手続きの特性が深く関係しています。本記事では、その背景を詳しく解説します。


目次[非表示]

  1. 1.公開公報を選ぶ理由
    1. 1.1.手続補正の影響
    2. 1.2.出願時点の内容が重視される
  2. 2.実例:公開公報と公告公報の違い
    1. 2.1.公開時の従来技術の記載
    2. 2.2.公告時の従来技術の記載
  3. 3.結論


公開公報を選ぶ理由


手続補正の影響

特許出願の過程で拒絶理由通知を受けた際、出願者が手続補正書を提出して明細書を修正することが一般的です。

この補正により、拒絶理由通知で引用された特許文献を新たに「従来技術」として取り込む補正が行われる場合があります。

このような補正が行われることがあるため、登録公報の明細書は、公報時のものと異なる内容になっている可能性があります。

一方、無効審判に使用する資料としては、特許出願日よりも前に公知となっている情報かどうかが重視されます。

そのため、「出願当時の明細書」として最も信頼性の高い資料である公開公報が、無効調査の際に使用されるのです。


出願時点の内容が重視される

特許の有効性を争う場合、出願時点での技術的内容が重要です。公開公報は、出願から1年半後に発行され、出願時点の内容がそのまま記載されています。

一方で、登録公報・公告公報は審査後に発行されるため、補正が加えられている場合があります。

したがって、出願時点の技術的背景を確認するには、公開公報が適切な資料となります。


実例:公開公報と公告公報の違い

以下に、公開公報と公告公報で従来技術の記載内容が異なる例を挙げます。

古い例ですが、出願時点の技術的背景を知るためには公開公報を見るのが望ましいことのわかりやすい実例としてご紹介します。


公開時の従来技術の記載

公開番号: 実開平6-24530

考案の名称: 携帯用液体容器

従来の技術(公開公報):

従来より、この種の炊飯器は、図7に示すように、容器本体Aをなす内ケースBの底部C上に、ヒータDを埋設した熱板Eを設け、この熱板E上に飯器Fの底部Gを載置するようにしてあり、前記熱板Eの外周壁E1と内ケースBの内底面B1との間には凹陥部Sが形成されているのが、一般的である。


公告時の従来技術の記載

公告番号: 実公平8-10297

従来の技術(公告公報):

従来、この種の炊飯器としては、(イ) 図6に示すように、容器本体Aをなす内ケースBの底部C部上に、ヒータDを埋設した熱板Eを設け、該熱板Eの外径は飯器の底面の外径より小さくし、この熱板E上に飯器Fの底部Gを載置するようにしてあり、前記熱板Eの外周壁E1と内ケースBのコーナー部B1の内底面との間には段差ができて凹陥部Sが形成されているのが、一般的である。
(ロ) また、実開昭63-171114号公報記載のように、内ケースの底部内に設けた熱板の外周縁部を、飯器の底部外周のコーナー部に沿って上方に延長し、上記内ケースの側面には該側面と前記熱板の延長部間の間隙を隠蔽する環状突条を設けた炊飯器も、知られている。


この例から分かるように、公開公報の記載内容と公告公報の記載内容には違いがあり、補正による変更が含まれることがあります。

無効調査では、これらの差異が重要なポイントとなります。


結論

調査会社が無効資料として公開公報を用いるのは、出願時点の技術内容を正確に把握するためです。

登録公報や公告公報では、補正が行われた後の内容が反映されるため、出願当時の情報を確認するには適さない場合があります。

このような背景から、公開公報が無効調査の信頼できる資料として選ばれているのです。


ロジック・マイスター 編集部

ロジック・マイスター 編集部

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