catch-img

特許・発明の効率的な見つけ方とは? ― 半導体、ゲーム、IT企業での経験から

Photo by Jonny Caspari on Unsplash


特許や発明の発掘は、企業の競争力を高める鍵です。

製品開発の現場では、発明をどのタイミングで、どのようにして発掘するかが知財部門にとって重要な課題となります。

この記事では、筆者が半導体、ゲーム、IT等の業界で培った経験を基に、製品開発や販売の過程で発明を発掘するための具体的な手法を、「新製品完成時点」「開発過程」「販売後」「開発者との会話」の4つのタイミングに分けて解説します。


目次[非表示]

  1. 1.新製品・新商品の完成時点
    1. 1.1.アプローチのポイント
      1. 1.1.1.発明者の話を引き出す
      2. 1.1.2.競合製品との比較
      3. 1.1.3.製品アピールに着目
  2. 2.開発過程での発掘
    1. 2.1.アプローチのポイント
      1. 2.1.1.開発会議の活用
      2. 2.1.2.事前調査の実施
      3. 2.1.3.旧製品の出願状況の把握
      4. 2.1.4.スケジュールに合わせた対応
  3. 3.販売後の発掘
    1. 3.1.アプローチのポイント
      1. 3.1.1.ユーザーからのクレームや改善点
      2. 3.1.2.競合製品の動向把握
      3. 3.1.3.他部門との連携
  4. 4.開発者との日常的な会話
    1. 4.1.アプローチのポイント
      1. 4.1.1.世間話から情報を収集
      2. 4.1.2.逆提案の実施
      3. 4.1.3.トラブル時の対応力向上
  5. 5.まとめ


新製品・新商品の完成時点

新製品が完成したタイミングは、発明の発掘に適した絶好の機会です。

この時点では、新旧製品の比較を通じて技術的・機能的な差分を洗い出し、発明の可能性を探ります。


アプローチのポイント

発明者の話を引き出す

開発者が口下手な場合もあるため、「苦労話」「開発動機」「製品アピールポイント」の3つを切り口にヒアリングを進めます。

例えば、開発の失敗談から改善点を探ることで、その改善が発明となる可能性を見出せます。


競合製品との比較

他社製品との差異や優位性を開発者から引き出すことで、発明の種を見つけることができます。

特に、コスト削減や製造工程の工夫に関する情報は、特許につながる可能性があります。


製品アピールに着目

新製品の特徴的な部分や、顧客への訴求ポイントがどのような技術や工程から生まれたのかを深掘りします。

これにより、財産的価値のある、すなわち製品価値向上に関わる発明に絞って特許出願することができます。




開発過程での発掘

開発の進行中にも発明を発掘するチャンスは豊富にあります。特に、開発会議の活用が重要です。


アプローチのポイント

開発会議の活用

知財部員が開発会議に参加し、進捗や問題点を把握します。

ただし、会議中は進行を妨げないようにし、会議後に詳細なヒアリングを行うのが基本です。


事前調査の実施

会議で得た情報をもとに特許調査を行い、発明の可能性を明確にしてから開発者と話すことで、効率的なヒアリングが可能になります。


旧製品の出願状況の把握

バージョンアップ開発の場合、過去の自社・他社の特許情報を事前に確認し、差分を意識した発明の抽出を目指します。


スケジュールに合わせた対応

複数部門にまたがる開発の場合、バトンタッチのタイミングごとにヒアリングを行うことで、発明の取りこぼしを防ぎます。




販売後の発掘

販売後も、発明の種を見つける機会は続きます。

特に、ユーザーや市場からのフィードバックが重要です。


アプローチのポイント

ユーザーからのクレームや改善点

営業部門を通じて得られるクレームや改善提案を、発明の課題として活用します。

かつて筆者の先輩が「クレーム(苦情)をクレーム(特許請求項)に」と駄洒落を言っていたことを思い出します。

この段階でのフィードバックは、実際のニーズに直結するため、有用な特許につながる可能性があります。


競合製品の動向把握

新製品が市場で注目を集めると、類似品が出てくる場合があります。

これらの情報を基に、既存の特許を補正したり、新たな出願を検討したりする必要があります。


他部門との連携

知財部まで営業部門の情報が回ってこないことがあるので、営業部門や開発部門から他社製品の情報を集める仕組みを作り、適切なタイミングで対応策を講じることが求められます。




開発者との日常的な会話

定期的に開発者とコミュニケーションを取ることも、発明の発掘において重要です。

日頃の会話が、知財活動をよりスムーズに進める基盤となります。


アプローチのポイント

世間話から情報を収集

開発者が現在取り組んでいることや今後の計画について、気軽な会話の中で情報を得ることができます。


逆提案の実施

知財部が新規性のある技術を特定し、発明提案書を作成して開発者に提案することで、スムーズな出願をサポートします。


トラブル時の対応力向上

他社特許で催告を受けた場合、社内調査や反論の検討に時間を要します。

そこで迅速に対応するためには、開発部門との日常的な信頼関係が不可欠です。

開発者からの協力を得やすくするためにも、普段からの連携を大切にしましょう。




まとめ

発明の発掘は、単に技術を整理するだけではなく、適切なタイミングとアプローチを見極めることが重要です。

「新製品完成時点」「開発過程」「販売後」「開発者との会話」の各タイミングで、それぞれの状況に応じた手法を取り入れることで、価値ある発明を効果的に見つけ出せるようになるでしょう。

知財部門の役割は、発明者や開発部門を支えることです。彼らとの信頼関係を築きながら、発明の発掘を成功させていきましょう。

松本 美司

松本 美司

株式会社ロジック・マイスター 代表取締役

お問い合わせ

特許調査や外国出願権利化サポートに関するお見積のご依頼、
当社の事業内容についてのお問い合わせなどございましたら、
お気軽にご相談ください。

こちらの記事もおすすめ

おすすめの資料

新着記事

よく読まれている記事

タグ一覧

サイトマップ